loader image

EAロジック設計論|第1章

バックテストとフォワードが乖離する理由

 

― “幻の優秀EA”を生み出す構造的問題 ―

EA(Expert Advisor)開発の世界では、バックテスト(BT)こそが信頼の証だと思われがちです。
「過去10年でPF2.0」「勝率80%」「ドローダウン10%未満」――そんな美しい数字が並ぶと、
誰もが “これは勝ち続けられるEAだ” と感じてしまうでしょう。

しかし現実のフォワード(FW)運用に移した途端、
同じEAが全く別物のようなパフォーマンスを見せることがあります。

なぜ、バックテストフォワードはここまで乖離するのか。
その理由は、**決済の構造(イグジット設計)**にあります。

 


■ バックテストが “幻の聖杯EA” を生み出す構造

多くのEAは、「どこで入るか」に重点を置き、
「どこで出るか」を明確に定義していません。

その典型が、SL(ストップロス)とTP(テイクプロフィット)を発注しないEAです。
つまり、内部ロジックでのみ決済するタイプ。

これらのEAは、バックテスト上では非常に “綺麗な右肩上がり” のエクイティカーブを描きます。


なぜなら、テスト環境下ではロジックが過去チャートを完全に知っているため、
損切りも利確も「最適なタイミング」で行われるからです。

いわゆる過剰最適化というものです。

そこにはスリッページも値飛びも、そして約定拒否も存在しません。

しかし実際の相場では、当然未来の足は確定していません。
つまり、バックテストでの完璧な “後出しジャンケン” は成立しないのです。
結果、同じEAでもFWでは全く異なる結果になるのです。

 


■ 「SL/TPを置かないEA」が抱える本質的な問題

バックテスト上で高成績を示す内部ロジック決済EAは、
次のような特徴を持ちます。

・SL/TPが存在せず、決済は内部ロジックの条件で行う

・SL/TPが“30”や“100”など、ざっくりした数字で設定されている

・SL/TPをパラメータ最適化に含めない(固定値のまま)

これらはすべて、エントリー時にリスクが定義されていないという点で共通しています。

リスクが定義されていないEAは、
フォワードでの損益の振れ幅をコントロールすることができず、
結果として “たまたま勝てていた期間” だけをBTが拾っていることになります。

バックテストでは、
「その期間にたまたま合っていたロジック」だけが強調され “未来に再現できない強さ” が演出されるのです。

 


■ “再現できない勝ち”はEAではなく「サインツール」

これはEAに限らず、インジケーターや裁量用サインツールにも同じことが言えます。

SLTPを伴わず、エントリーのみを提示するロジックは、
「どこで終えるか」を定義していないため、戦略ではなく “判断補助” に過ぎません。

言い換えれば、
EA化されたサインツールはEAではあってもストラテジーではないのです。

 


■ ストラテジーとは“リスクを定義する思想”

本来の意味でのストラテジー(戦略)とは、
「どこで戦いを始め、どこで退くか」を明示したもの。

つまり、エントリーの根拠と同時に、
リスクを数値で表現できることがEAの条件です。

このリスク設計(=イグジット設計)を曖昧にしたままでは、
どれだけ美しいバックテストを描いても、
それは一過性の幻想でしかありません。

 


■ ショック相場が『EAの本質』を暴く

2010年代のアベノミクス相場や2020年のコロナショックなど、
強烈なトレンドや急変動を経験すると、
EAの本質が浮き彫りになります。

内部ロジックでのみ決済するEAは、
そのような異常相場で “出口を見失う” ことが多い傾向があります。

逆に、明確なSLTPを持つEAは、
損切りを受け入れることで生き残る余地を残します。

どちらが「長生きするEA」かは明白です。

 


■ まとめ:EAの再現性はイグジットで決まる

バックテストとフォワードの乖離は、
データ精度やティック再現率の問題ではなく、
EA構造の問題です。

再現性のあるEAとは、

・エントリー時にリスクと報酬が確定している

・SLTPが最適化に含まれている

・決済が「価格の反応」で行われる

この3条件を満たすEAこそ、
バックテストとフォワードが“同じ呼吸”で動くEAです。

 


 


Blogs
What's New Trending

Related Blogs