貿易立国から投資立国へ。
( 貯蓄の時代から投資の時代へ )
すでに日本経済のマクロ的な構造は逆転しており、経常収支の落ち込みと資本流出の数値がそれを物語る。
少し前の話になるが、先日8/13に発表(財務省)された本邦6月の国際収支では、貿易収支の黒字が前年同月比81.3%減少の2521億円となったことから、経常収支の黒字は過去最大の減少額となる前年同月比1兆224億円(67.4%)減の4939億円にとどまったそうだ。
あまりフォーカスされていない?、あるいは報道で大きく取り上げられなかったのが不思議なのだが、
67.4%減少というのは、かなりショッキングな数字ではないのか?
67.4%減と表現するより、「1兆5000億円が5000億円、約3分の1になった」と言われたほうがわかりやすいのかもしれないが...
同時に発表された上半期(1~6月)の国際収支は、前年同期比15.9%減の10兆4558億円となり、2005年上半期以来、6期(3年)ぶりに黒字幅が縮小したそうだ。
( ⇔ 輸入が11.6%増の36兆3182億円と12期連続で増加、調査開始以来過去最大額を記録)
その一方では、日本の企業などが以前行った海外投資からの配当や金利収入などを示す「所得収支」の黒字は、0.8%微増の8兆5371億円で、半期ベースで過去最大の黒字額となったらしい。
巨額な対外純資産残高を積み上げる世界最大規模の債権国である日本の、対外純資産は投資リターンで年々積み上がっているらしく、表面的には一応?金融立国に向かっているようではあるのだが...
日本はもはや貿易立国ではなく、立派な「投資立国/金融立国」であるにもかかわらず...
「投資に関する知識レベル、状況」は脆弱と言わざるを得ない。
繰り返しになるが、巨額な対外純資産残高を積み上げる世界最大級の債権国であり、対外投資のパフォーマンス向上、それを担う機関投資家や個人投資家の合理的投資戦略や知識がますます重要になるにもかかわらず、である。
戦後の復興からバブル崩壊までは、それでもよかったし、それが逆に美徳でもあった。
黙々と働き、貯蓄すること、投資知識の普及などなおざりにされ、家計は銀行や郵貯に貯蓄、その運用は銀行や官僚が都合のいいようにコントロールできるというようなモデルであった。
その後バブルの崩壊を契機に、所得の伸びが期待できなくなったことから、政府もようやく「貯蓄から投資へ」と基本的な政策理念を転換したのである。
ところが、
目立つのは、株や外国為替のインターネットトレーディングで、短期的な売買益を稼ぐゲームに興じる人々の急増である。まるでサルが投資ゲームに興じているような...
ブームを煽るように書店に平積みされる数多くの株やFXの書籍を見ると、中には短期的な取引で誰もがいともたやすく大金を稼ぐことができるようなタイトルやPOPで彩られた「ジャンク」なものが混ざる。(インターネットでは逆にそういったものがスタンダード(笑))
短期売買の投資ゲームで、一般個人投資家が一時的に儲かることはあっても、長期的に高いパフォーマンスを維持することは極めて難しいということは、金融先進国では公知の事実であるにもかかわらずである。
サルに投資ゲームをさせてみたとしよう。サルを100万匹集めて、売るか買うかを操作させる投資ゲームを20回させてみたとする。結果は当たり前だが、半数のサルは儲け、残り半数のサルは損をする。全体の平均値、損益はゼロ。だが、一度も負けないサルが確率的に1匹生まれる。これは偏差の産物でしかないのだが、このことが理解できないと、ありもしない「金のなる木」探しで膨大な時間を浪費してしまうことになる。
努力を嫌い、すぐに結果のみを欲しがる傾向の人が増えているのか、この手のジャンク的なものの方が売れ行きがよいのは悲しい現実ではなかろうか。
日本はまだ、世界的に見て裕福な国であり(投下資本があるということ)、規制緩和から外国為替投資が解禁され、さらにブロードバンドや取引手数料の引き下げ等のインフラ整備もほぼ完了しているこのすばらしい環境。
足りないのは投資知識のみではないのか?
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8月
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