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金融庁無登録業者の調査を強化 〜証券監視委が刑事告発可能に〜

下記のようなニュースが出ました。金融庁への無登録業者による投資詐欺が後を絶たないことに対する対策ですね。

金融庁が、金融商品取引業に登録せず投資勧誘を行っている業者に対し、証券取引等監視委員会の調査権限強化を検討していることが9日、分かった。これまで監視委は無登録業者に対して刑事告発ができなかったが、告発とそれに向けた強制力のある調査が可能になる。金融犯罪に知見がある監視委が早期に実態解明に乗り出すことで、詐欺などの被害拡大を防ぎたい考えだ。月内にも開く金融審議会(首相の諮問機関)の作業部会で議論。金融商品取引法の改正案に盛り込むことも視野に入れる。法改正が伴う場合は、早ければ2026年の通常国会に金商法改正案を提出することを目指す。政令改正でとどまる可能性もある。https://www.tokyo-np.co.jp/article/434577?s=06

 

この金融庁による無登録業者への監視強化法改正の「確度」は非常に高いと考えられます。過去の類似事例から、金融犯罪や投資者保護に関わる問題が社会的な注目を集めた場合、国会での法改正や規制強化はスムーズに進む傾向があります。

過去の事例と確度

  • 2006年の証券取引法改正時も、金融犯罪や投資詐欺への対策強化として証券取引等監視委員会の権限が段階的に拡充されてきた実績があります。

  • 実際に、詐欺の被害額の増加や事件発覚時には、行政や立法の動きが加速しやすく、これまで特定分野で告発や強制調査権限の付与も時間をかけずに実現しています。

  • 今回は金融庁自身が主導し、金融審議会での議論、そして首相諮問機関による検討が既に予定されている点からも、実現への機運は非常に高いと思われます。

法改正と政令改正の可能性

  • 金融商品取引法自体の改正は2026年通常国会提出が目標と明記されており、これが実現すれば「法改正」ルートです。

  • 一方、行政レベルでの迅速な規制強化の必要性が認められれば、政令(省令)改正で先行して調査権限や告発ルールのみを改める対応が取られる可能性も否定できません。この場合、実効性や範囲は法改正比で限定されますが、過去にも省令や政令改正が暫定措置として用いられた実例があります。

近年の無登録業者摘発件数は、減少傾向から再び増加に転じており、令和6年(2024年)には「無登録・高金利事犯」の検挙事件数が70件(前年比25%増)となっています。これは過去最低だった令和5年(2023年)の56件から増加した形です。

摘発件数推移(過去10年)

  • 平成27年(2015年):140件

  • 平成28年(2016年):139件

  • 平成29年(2017年):135件

  • 平成30年(2018年):130件

  • 令和元年(2019年):118件

  • 令和2年(2020年):106件

  • 令和3年(2021年):85件

  • 令和4年(2022年):60件

  • 令和5年(2023年):56件

  • 令和6年(2024年):70件

刑事告発の現状と推移

警察庁や金融庁が公表している資料では、無登録業者への刑事告発件数は摘発件数に比べ少ないですが、告発事例は「悪質性が高い」「被害が深刻」なものを中心に行われてきました。近年は刑事告発の権限強化が議論されているものの、実際の告発件数の公表は限定的です。

  • 直近数年は摘発された事件のうち悪質事例のみが刑事告発に至っており、件数は公表数値ベースで年間数件~十数件程度と推定されます。

  • 金融庁や証券取引等監視委員会は行政処分(業務停止・勧告・命令)が中心ですが、刑事告発は捜査権が拡大すれば増加が予想されます。

傾向と特徴

  • 令和6年は2023年より摘発件数が増加、潜在的な被害拡大と警戒レベル上昇を反映する動き。

  • 告発権限の拡大が進めば、将来的には告発件数も増加が見込まれる。

このように、近年は無登録業者の摘発件数で底打ちから増加に転じる傾向が見られ、刑事告発件数も実効性の強化に向けて今後増加する可能性が高い状況です。

過去に証券取引等監視委員会(監視委)の権限が強化された法改正の主な事例は、2006年の証券取引法改正(その後の金融商品取引法への全面移行)が典型です。この改正によって監視委の調査・検査権限が拡大され、市場監視の実効性向上が図られました。

主な法改正事例

  • 2006年 証券取引法等改正法案(その後金融商品取引法へ)

    • 証券取引等監視委員会による調査・検査の権限強化

    • 「有価証券報告書の提出者だけ」でなく、「参考人」も検査対象に加えられた

    • 証券監視委職員が裁判官の令状によって郵便物等の差押えも可能に

    • 公正取引委員会の犯則調査権限と類似した強制調査権を一部付与

  • 2005~2007年 課徴金制度導入、証券検査権限拡大

    • 課徴金(行政罰)制度を日本の監視委も導入。違反抑止力が強化された

    • 検査対象が証券会社の枠を越え、投資顧問業者など金融商品取引業全体に拡大

    • ファンド等、関連する金融商品取引業への検査権限も追加

  • 近年の事例(2020年代)

    • 暗号資産取引業者や電子記録移転権利取り扱い業者にも監視委の検査権限を拡大

    • 告発実績としてライブドア事件(偽計・風説の流布)、日興証券事件(相場操縦)等を刑事告発

権限強化の結果・影響

  • 監視委は「本格的な強制調査」「刑事告発」が可能となり市場違反への抑止力が増した.

  • 課徴金の適用範囲が拡大されたことで、違反行為への迅速な行政的制裁が可能になった。

  • 社会的にはライブドア事件以降、証券・金融犯罪への監視と対応力が格段に向上。

  • 検査・調査の対象や方法が広がったため、不公正取引や開示規制違反などへの対応も速く・幅広くなった。

このように、過去の監視委権限強化の法改正では、違反行為への行政対応・刑事告発の実効性・市場取引の信頼性が明確に向上しています。

まとめ

  • 金商法の「法改正」本体は高い確度で進む見通し。

  • 詐欺事件の深刻化や消費者保護への世論が強ければ政令改正が先行する可能性もある。

  • 過去事例からも、金融犯罪対策では強権発動や規制強化が迅速に進む傾向。

このため、法改正が実現する可能性は高く、政令改正でまず対応し、後に法改正とする流れも十分想定できます。

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