投資の基礎知識 | 企業価値評価
PCFR相対法とは?キャッシュフローで株価の割安度を測る指標
会計上の「利益」は、減価償却などの処理によって企業ごとに差が出ます。その影響を取り除き、実際の資金の流れ(キャッシュフロー)で株価を評価するのがPCFR相対法です。設備投資の重い企業や、利益とキャッシュが乖離しやすい企業の比較に役立つ指標を解説します。
1PCFRとは何か
PCFR(Price to Cash Flow Ratio:株価キャッシュフロー倍率)とは、「株価が1株あたりキャッシュフローの何倍か」を示す指標です。次の式で計算します。
※ キャッシュフロー ≒ 当期純利益 + 減価償却費(簡易的な定義)
PERが「純利益」を使うのに対し、PCFRは純利益に減価償却費を足し戻したキャッシュフローを使います。減価償却は実際には現金が出ていかない費用のため、それを戻すことで「本業で手元に残る資金」に近い数字で評価できるのが特徴です。PCFRが低いほど割安、高いほど割高と見なされます。
2PCFR相対法の考え方
PCFR相対法は、「対象企業のCFPS(1株あたりキャッシュフロー)」に「同業種の平均PCFR」を掛けて理論株価を求める手法です。
減価償却費の大きい企業ほど、PERとPCFRの差が大きくなります。たとえば大型の設備投資を行う製造業・インフラ・不動産業などは、会計上の利益が減価償却で圧縮されてPERが高く見えても、キャッシュベースのPCFRで見ると割安、というケースがあります。会計方針の違いによる利益のブレを抑えて比較したいときに有効です。
3具体的な計算イメージ
仮の数値で計算してみましょう。あくまで手法を理解するための例であり、特定の銘柄や実在企業を示すものではありません。
前提:1株あたり純利益(EPS)= 100円/1株あたり減価償却費= 60円/業種平均PCFR= 8倍/現在株価= 1,000円
理論株価 = CFPS 160円 × 業種平均PCFR 8倍 = 1,280円
乖離率 = (1,280 − 1,000) ÷ 1,000 = 約 +28%
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 1株あたり純利益(EPS) | 100 円 |
| 1株あたり減価償却費 | 60 円 |
| 1株あたりCF(CFPS) | 160 円 |
| 業種平均PCFR | 8 倍 |
| 理論株価(CFPS×業種平均PCFR) | 1,280 円 |
| 現在株価 | 1,000 円 |
| 乖離率 | +28% |
※同じ企業でも、純利益(EPS100円)だけで見るPERと、減価償却を足したキャッシュフロー(CFPS160円)で見るPCFRとでは、割安・割高の印象が変わります。
4PCFR相対法のメリットと注意点
メリット
- 減価償却の影響を除き実際の資金の流れに近い評価
- 会計方針の違いによる利益のブレを抑えられる
- 設備投資の重い業種の比較に向く
- 利益が小さくてもキャッシュを稼ぐ企業を捉えられる
注意点
- 設備投資(支出)そのものは反映されない
- 簡易CF(利益+減価償却)は本来の営業CFと異なる
- 知名度が低くデータが揃いにくい
- 業種平均PCFRの偏りに影響される
PCFRのキャッシュフロー(利益+減価償却)は、あくまで入ってくる資金に近い簡易的な数字です。実際には、その資金の多くを次の設備投資に使う企業もあります。手元に本当に残る資金(フリーキャッシュフロー)を見るには、設備投資額まで考慮する必要があります。PCFRは便利ですが、投資負担と併せて解釈することが大切です。
5まとめ
- PCFRは「株価 ÷ 1株あたりキャッシュフロー」で、キャッシュベースの割安度を測る指標。
- PCFR相対法は「CFPS × 業種平均PCFR」で理論株価を求める手法。
- 減価償却の影響を除ける一方、設備投資の支出は反映しない点に注意。
- PER・EV/EBITDA・DCFなど他手法と併用し、多面的に判断するのが実務の基本。
PCFRは、会計上の利益だけでは見えにくい「資金を稼ぐ力」を捉える補助指標です。当社では、こうした基礎指標の考え方から実際の投資戦略・リスク管理まで、投資家の皆さまが「投資家として、成功するために」必要な知識をお伝えしています。他の評価手法は当社コラムもあわせてご覧ください。
本コラムは、企業価値評価に関する一般的な考え方を解説する情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄・金融商品の売買や投資判断を推奨・勧誘するものではありません。記載した数値・計算例はすべて手法を説明するための仮定であり、実在する企業や将来の運用成果を示すものではありません。
PCFR相対法をはじめとする各評価手法は、キャッシュフローの定義や比較対象の取り方によって結果が変動します。将来の株価の動向を保証・約束するものではなく、投資には元本割れを含む価格変動リスクがあります。
最終的な投資のご判断は、ご自身の責任と裁量において行っていただきますようお願いいたします。






