投資の基礎知識 | 企業価値評価
残余利益モデル(RIM)とは?純資産と超過利益から株価を求める
「純資産(BPS)」という確かな土台に、「その企業が生み出す超過利益」を積み上げて株価を評価する——それが残余利益モデル(RIM)です。純資産法とDCF法の“良いとこ取り”とも言われるこの手法を、残余利益という考え方を中心に解説します。
1残余利益モデル(RIM)とは
RIM(Residual Income Model:残余利益モデル)とは、「現在の純資産(株主資本)に、将来生み出す残余利益の現在価値を足し合わせて株式価値を求める」評価手法です。残余利益(=超過利益)とは、株主が期待する最低限のリターン(株主資本コスト)を上回って稼いだ「超過分」の利益を指します。
= (ROE − 株主資本コスト r) × 自己資本(BPS)
つまり、ROE(自己資本利益率)が株主の期待収益率(r)を上回っている企業ほど、残余利益がプラスになり、純資産以上の価値が生まれるという考え方です。
2理論株価の計算式
RIMは「土台(現在の純資産)+ 上乗せ(超過利益の蓄積)」で株価を捉えます。ROEがrちょうどなら残余利益はゼロで、理論株価はBPSと一致します(PBR1倍)。ROEがrを上回ればBPSに価値が上乗せされ(PBR1倍超)、下回ればBPSより低く評価される(PBR1倍割れ)——この関係は、PBRとROEの結びつきを理論的に説明してくれます。
3具体的な計算イメージ
仮の数値で計算してみましょう。あくまで手法を理解するための例であり、特定の銘柄や実在企業を示すものではありません。話を簡単にするため、残余利益が毎年一定と仮定します。
前提:現在のBPS= 1,000円/ROE= 10%/株主資本コスト(r)= 6%
残余利益の現在価値合計(一定・永続と仮定) = 40 ÷ 0.06 = 約 667円
理論株価 = BPS 1,000円 + 667円 = 約 1,667円
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 現在のBPS(1株純資産) | 1,000 円 |
| ROE(自己資本利益率) | 10% |
| 株主資本コスト(r) | 6% |
| 残余利益(1年分) | 40 円 |
| 残余利益の現在価値合計 | 約 667 円 |
| 理論株価(BPS+超過利益) | 約 1,667 円 |
※もしROEが株主資本コストと同じ6%なら残余利益はゼロとなり、理論株価はBPS(1,000円)と一致します。ROEがrをどれだけ上回るかが価値を左右します。
4RIMのメリットと注意点
メリット
- 純資産という確かな土台から出発するため安定的
- ROEと株価(PBR)の関係を理論的に説明できる
- DCF法より予測期間の影響を受けにくい
- 配当を出さない企業にも適用しやすい
注意点
- 将来のROE・利益予測が必要で前提に依存する
- 株主資本コスト(r)の設定で結果が変動
- 会計上の純資産・利益の質に影響される
- 計算がやや複雑で直感的にわかりにくい
RIMが教えてくれる本質は、企業が株主の期待(資本コスト)を上回るROEを出して初めて、純資産を超える価値が生まれるということです。近年、上場企業に「資本コストや株価を意識した経営」が求められている背景も、この考え方と深く結びついています。数字の裏にある「稼ぐ力の質」を見る視点として有効です。
5まとめ
- RIMは「現在のBPS + 将来の残余利益の現在価値」で株価を求める手法。
- 残余利益は(ROE − 資本コスト) × 自己資本で、超過利益の蓄積を表す。
- 純資産の安定性とDCFの収益視点を併せ持つが、ROE予測と資本コストの前提に依存する。
- 純資産法・DCF法・PBRなど他手法と併用し、多面的に判断するのが実務の基本。
RIMは「資産の裏付け」と「稼ぐ力」を橋渡しする、実務でも重視される評価手法です。当社では、こうした基礎的な評価の考え方から実際の投資戦略・リスク管理まで、投資家の皆さまが「投資家として、成功するために」必要な知識をお伝えしています。他の評価手法は当社コラムもあわせてご覧ください。
本コラムは、企業価値評価に関する一般的な考え方を解説する情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄・金融商品の売買や投資判断を推奨・勧誘するものではありません。記載した数値・計算例はすべて手法を説明するための仮定であり、実在する企業や将来の運用成果を示すものではありません。
残余利益モデルをはじめとする各評価手法は、前提条件の置き方によって結果が変動します。将来のROEや株価の動向を保証・約束するものではなく、投資には元本割れを含む価格変動リスクがあります。
最終的な投資のご判断は、ご自身の責任と裁量において行っていただきますようお願いいたします。






