
公的年金制度について…
日本の「公的年金制度」について、初心者の方にもわかりやすく、丁寧にご説明します。
🧾 公的年金制度とは?
日本の公的年金制度は、**すべての国民が加入する「国の仕組み」**であり、老後の生活を支えるだけでなく、病気や障害、万一の死亡時の遺族保障も含まれる「社会保険制度」の一部です。
この制度は「2階建て構造」になっていて、国民全員が1階部分に加入し、職業や働き方によって2階部分にも加入する仕組みです。
🏛 公的年金の2階建て構造
階層 | 内容 | 対象者 |
---|---|---|
1階部分 | 国民年金(基礎年金) | すべての国民(20歳~60歳) |
2階部分 | 厚生年金保険 | 主に会社員・公務員などの被用者 |
🧱 1階:国民年金(基礎年金)
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対象:日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人
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加入義務あり(学生・自営業・主婦なども)
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毎月の保険料(2024年度):16,980円(定額)
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65歳から、満額で月約66,000円(年約79万円)(40年間納付した場合)
➕ 保障内容:
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老齢基礎年金(65歳から)
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障害基礎年金(障害状態になった場合)
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遺族基礎年金(子のある配偶者など)
🏢 2階:厚生年金
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対象:会社員、公務員など、企業や団体に雇用されている人
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保険料:給料の18.3%(労使折半)
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国民年金に上乗せして、将来の年金額が多くなる
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給与や勤続年数に応じて年金額が変わる
➕ 保障内容:
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老齢厚生年金(基礎年金に上乗せ)
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障害厚生年金
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遺族厚生年金
🧑🔧 加入者の区分(3つの被保険者)
区分 | 加入対象 | 年金の種類 |
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第1号被保険者 | 自営業、学生、無職など | 国民年金のみ |
第2号被保険者 | 会社員・公務員 | 国民年金 + 厚生年金 |
第3号被保険者 | 第2号被保険者に扶養されている配偶者(主に専業主婦) | 国民年金(保険料負担なし) |
📅 年金の受け取り開始時期
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原則:65歳から支給開始
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繰り上げ受給:60歳〜64歳(年金額が最大30%減額)
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繰り下げ受給:66歳〜75歳(年金額が最大84%増額)
💡 ポイントまとめ
✅ すべての人が「国民年金」に加入(自動的に加入)
✅ 会社員・公務員は「厚生年金」にも加入(2階建て)
✅ 年金は老後だけでなく、「障害」「死亡」など人生のリスクにも備えるもの
✅ 受給額は「納付期間・収入・加入年数」によって決まる
🕰 公的年金の「繰り上げ受給」「繰り下げ受給」とは?
通常、公的年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)は65歳から支給開始されますが、希望に応じて、
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繰り上げ受給(60〜64歳で早くもらう)
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繰り下げ受給(66〜75歳まで遅らせる)
ことができます。
その代わり、**年金の支給額が調整される(増減する)**仕組みです。
📉 繰り上げ受給(60〜64歳)
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受給開始年齢:60歳〜64歳
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メリット:早くもらえる(すぐ収入が得られる)
-
デメリット:一生涯にわたって年金額が減額される
減額率(2022年4月以降の新ルール):
受給開始年齢 | 減額率 |
---|---|
60歳0ヶ月 | ▲24.0% |
61歳0ヶ月 | ▲19.2% |
62歳0ヶ月 | ▲14.4% |
63歳0ヶ月 | ▲9.6% |
64歳0ヶ月 | ▲4.8% |
※1ヶ月繰り上げるごとに 0.4% 減額(2022年4月以降)
📈 繰り下げ受給(66〜75歳)
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受給開始年齢:66歳〜75歳
-
メリット:年金額が増額される(生涯にわたって増額された金額を受け取れる)
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デメリット:支給が遅れる(働いているか他の収入がある人向け)
増額率:
受給開始年齢 | 増額率 |
---|---|
66歳0ヶ月 | +8.4% |
67歳0ヶ月 | +16.8% |
68歳0ヶ月 | +25.2% |
69歳0ヶ月 | +33.6% |
70歳0ヶ月 | +42.0% |
75歳0ヶ月 | +84.0%(最大) |
※1ヶ月繰り下げるごとに 0.7% 増額
📊 例:老齢基礎年金 月額6万6,000円(満額)の場合
開始年齢 | 割合 | 支給額(月額) |
---|---|---|
60歳 | 76% | 約5.0万円 |
65歳 | 100% | 約6.6万円 |
70歳 | 142% | 約9.4万円 |
75歳 | 184% | 約12.1万円 |
💡 ポイント・注意点
✅ 繰り上げ受給するなら:
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長生きするほど「総支給額」は少なくなる可能性あり
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健康不安や働けないなど、早期に現金が必要な人向け
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遺族年金・障害年金など、他の年金と併給できなくなる場合がある
✅ 繰り下げ受給するなら:
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長生きすればするほど「お得」
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他に収入源(仕事・貯金・企業年金など)がある人向け
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繰り下げ中に死亡すると、受け取らずに終わるリスクも
🧮 総額で得か損か?(ざっくりシミュレーション)
例えば、基礎年金を【65歳から年79万円】もらう場合で比較すると…
開始年齢 | 増減率 | 80歳時点の累計額(目安) |
---|---|---|
60歳 | ▲24% | 約950万円(5万円×12ヶ月×20年) |
65歳 | ±0% | 約1,185万円(6.6万円×12ヶ月×15年) |
70歳 | +42% | 約1,351万円(9.4万円×12ヶ月×10年) |
→ 寿命が80歳までなら「65歳受給」がバランス良く
→ 85歳以上生きる場合は「繰り下げ受給」が有利になりやすい
🔚 まとめ
項目 | 繰り上げ受給 | 繰り下げ受給 |
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年金開始年齢 | 60〜64歳 | 66〜75歳 |
メリット | 早くもらえる | 受給額が増える |
デメリット | 一生減額される | 一生増額されるが開始は遅い |
向いている人 | 早く収入が必要な人 | 長生きや貯蓄に余裕がある人 |