
不動産所得の経費はどこまで計上できるのか?
不動産投資を行う際、賃貸収入に対して適切に経費を計上することは、税負担を抑える重要なポイントです。しかし、どこまで経費として認められるのか、判断が難しいケースもあります。今回は、不動産所得の経費として計上できるもの・できないものについて詳しく解説します。
1. 不動産所得における「経費」とは?
不動産所得とは、賃貸物件の家賃収入などから必要経費を差し引いた所得のことです。経費として計上できるものは、事業や賃貸経営に直接関わる費用に限られます。
計上可能な経費の基本条件:
✅ 賃貸収入を得るために必要な支出であること
✅ 領収書や契約書などの証拠資料があること
✅ プライベートな支出と明確に区別できること
2. 計上できる経費一覧
(1) 固定資産税・都市計画税
賃貸物件にかかる固定資産税や都市計画税は経費として計上可能です。ただし、自宅と併用している場合は、賃貸部分の面積に応じた按分が必要になります。
(2) 減価償却費
建物や設備は年々価値が減少するため、その減少分を経費として計上できます。土地は減価償却の対象外ですが、建物やエアコンなどの設備は償却可能です。
(3) ローン利息(借入金利息)
不動産購入時のローン利息(元本部分は不可)は経費になります。ただし、自宅兼用のローンの場合は賃貸部分に応じた按分が必要です。
(4) 修繕費
建物や設備の修理・メンテナンス費用は経費になります。ただし、「資本的支出」として扱われる大規模リフォームは経費ではなく、減価償却の対象となります。
✅ 修繕費として認められる例
- 壁紙の張り替え
- 給湯器の修理
- 破損したドアの交換
❌ 修繕費にならない例(資本的支出)
- 建物の耐震補強
- 設備の大規模改修
(5) 管理費・委託費
管理会社へ支払う管理料や清掃費、広告費などは経費になります。自主管理の場合は、業務にかかった実費(交通費など)は経費にできますが、自分の労働に対する報酬は経費にできません。
(6) 火災保険料・地震保険料
賃貸物件にかかる保険料は、契約期間に応じて経費計上が可能です。
(7) 水道光熱費
共用部分の電気・水道代は経費にできますが、入居者負担の分は計上できません。
(8) 交通費・通信費
物件の管理や入居者対応のためにかかった交通費(電車・バス代、ガソリン代)や、管理業務のための通信費(電話代・郵送費など)も経費になります。
(9) 税理士・司法書士報酬
確定申告の税理士報酬や、購入時の登記費用として支払う司法書士報酬は経費になります。
(10) 広告宣伝費
空室対策として掲載した賃貸募集の広告費も経費計上可能です。
3. 計上できない経費の例
経費として認められない支出には以下のようなものがあります。
❌ 不動産投資とは直接関係のない費用
- 自宅の固定資産税や修繕費
- 家族との外食費
- 賃貸と関係のない保険料
❌ 土地の購入費用・ローンの元本返済
- 土地は減価償却できないため、購入費用を経費計上できません。
- ローンの元本返済分も経費にはできず、経費になるのは「利息部分」のみ。
❌ 設備のグレードアップ費用(資本的支出)
- 単なる修理ではなく、建物の価値を向上させるリフォーム(例:和室を洋室に変更)は、減価償却資産として扱われます。
4. 経費計上のポイントと節税対策
(1) 領収書・証拠資料を必ず保管する
税務調査で指摘を受けないよう、経費として計上する際は領収書や請求書を必ず保存しましょう。特に、現金払いの費用は記録を残すことが重要です。
(2) 賃貸部分と自宅部分を按分する
自宅兼賃貸の場合、面積比率や使用割合に応じて按分する必要があります。按分ルールを明確にしておきましょう。
(3) 修繕費と資本的支出を区別する
修理費として経費計上できるか、減価償却対象になるかの判断が重要です。迷った場合は税理士に相談するのがベスト。
(4) 青色申告を活用する
青色申告(65万円控除)を利用すると、経費計上の幅が広がるだけでなく、赤字を繰り越せるメリットもあります。
5. まとめ
不動産所得の経費計上は、適切に行うことで税負担を軽減できます。以下のポイントを押さえながら、正しく経費を計上しましょう。
✅ 賃貸収入を得るために必要な支出は経費にできる
✅ 領収書や請求書をしっかり保存する
✅ 修繕費・資本的支出の違いを理解する
✅ 青色申告を活用して節税対策を行う
適切な経費計上を行い、無駄な税負担を減らしながら、効率的な不動産経営を目指しましょう!